福島県沖地震(ふくしまけんおきじしん)とは、日本の福島県の沖合を震源とする地震である。

このうち東日本大震災を引き起こした「東北地方太平洋沖地震」は、顕著な災害を起こした自然現象として気象庁によって名称を定められた。

概要

福島県沖は北アメリカプレートと太平洋プレートの境界に接しており、日本海溝沿いにあるため、日本でも有数の地震多発地域である。1938年11月5日の福島県東方沖地震や2008年7月19日に発生した地震では津波を観測し、さらに福島県沖も震源域に含まれる2011年(平成23年)3月11日の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災、同地域では本震直後に余震も複数回発生)では大津波によって福島第一原子力発電所事故を引き起こした。

伊豆・小笠原海溝は太平洋プレートの高角の沈み込み帯であり地震カップリング率が低くプレート移動のひずみエネルギーの多くは非地震性の滑りで解消されるため巨大地震は起こりにくいとされ、日本海溝のプレート境界も従来のアスペリティモデルでは南部でやはり地震カップリング率が低く、宮城県沖・福島県沖など各セグメントを震源域とする地震は発生しうるが、複数のセグメントにまたがる連動型地震は起こりにくい場所とされてきた。

江戸時代以降で福島県沖を震源域とする顕著な地震は1938年の福島県東方沖地震のみとされてきた。地震調査研究推進本部による2009年時点の「三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価」では福島県沖のM7.4前後のプレート間地震の発生間隔は400年以上と評価されていた。しかし東北地方太平洋沖地震は福島県沖を含む広大な範囲を包括する巨大地震であった。

M7以下クラスのプレート間およびプレート内地震は1990年代以降続発している。

主な地震

繰り返し発生する地震や連動型地震で福島県沖を震源域に含むものをここで扱う。

869年

869年に発生した貞観地震の震源域は少なくとも宮城県沖から福島県沖までの領域を含むと考えられる。東北地方太平洋沖地震と同様、震源域が三陸沖から茨城県沖、さらにそれらの領域の海溝寄りまで広がる可能性もある。

1938年

塩屋崎沖地震とも呼ばれる。1938年11月5日17時43分にM7.5、同日19時50分にM7.3、翌日6日17時54分にM7.4など大地震が続発した。

2011年

2011年3月11日に起きた東北地方太平洋沖地震の震源域には福島県沖も含まれ、海溝寄りで数m程度の滑りが生じたと考えられるが、全ての歪が解放されたかは不明である。また、この地震発生後から2021年3月末までに福島県沖を含む震源域内で発生した地震はこの地震の余震として取り扱われた(主な余震は後節も参照)。

東北地方太平洋沖地震の余震

2011年(平成23年)3月11日に起きたM9.0の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)は、福島県沖も震源域の一部に含まれており、本震以降、福島県沖を震源として頻繁に発生した地震は余震として扱われた。主な余震は以下の通り。

2011年

7月

2011年7月31日午前3時54分、福島県沖の深さ57キロメートル (km) を震源とするM6.5の地震が発生。福島県で最大震度5強を、茨城県や栃木県でも震度5弱を観測した。

この地震は、太平洋プレート内部で発生した、西北西-東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型のスラブ内地震であった。

地震による負傷者は11名。

震度5弱以上の地点は次の通り。

このほか、北海道から滋賀県にかけての広い範囲で、震度4から震度1を観測した。

8月

2011年8月19日14時36分、福島県沖の深さ51 kmを震源とするM6.5の地震が発生し、宮城県と福島県で最大震度5弱を観測した。太平洋プレートの内部で発生した、逆断層型(東西に圧力軸を持つ)のスラブ内地震であった。地震による負傷者は2名。

気象庁はこの地震で、宮城県と福島県の沿岸に津波注意報を発表したが、津波は観測されず、15時15分に全て解除した。

最大震度5弱を観測した地点は次の通り。

2013年

2013年10月26日2時10分、福島県沖の深さ56 kmを震源とするM7.1の地震が発生し、宮城県や福島県、茨城県、栃木県などで最大震度4を観測した。

東西方向に張力軸を持つ正断層型地震であり、太平洋プレートの内部で起きた(いわゆる)アウターライズ地震であった。東北地方太平洋沖地震以降、このようなタイプの余震も度々発生しており、本震の約40分後に起きたM7.5の地震や2012年12月に起きた三陸沖地震なども同様のメカニズムである。

この地震による負傷者は1名のみで、大きな被害には至らなかった。

震度4以上の地点は次の通り。

気象庁はこの地震で、2時14分に福島県の沿岸に津波注意報を発表。その36分後には岩手県、宮城県、茨城県の太平洋沿岸、それに千葉県の九十九里・外房にも津波注意報を発表した。宮城県の石巻市鮎川で、高さ36 cmの津波を観測したほか、福島県や岩手県でも津波を観測した。津波注意報は、同日4時5分に全て解除された。

津波注意報が発表された地域で観測された津波の高さは次の通り。

2014年

2014年7月12日4時22分、福島県沖の深さ33 kmを震源とするM7.0の地震が発生し、宮城県、福島県、茨城県、栃木県で震度4を観測した。東西方向に張力軸を持つ、正断層型の地震であった。

この地震により、各地で小さい津波を観測した他、1名が負傷する被害が出た。

震度4以上の地点は次の通り。

気象庁はこの地震で、福島県と宮城県、岩手県の太平洋沿岸に津波注意報を発表。宮城県石巻市鮎川で高さ17 cmの津波を観測した。津波注意報はおよそ2時間後に全て解除された。

津波注意報が発表された地域で観測された津波の高さは次の通り。

2016年

2021年

その他の地震

繰り返し発生する地震、東北地方太平洋沖地震の余震などとして扱われない地震をここで扱う。

1905年

1905年7月7日にM7.1の地震が発生した。規模が小さく被害も認められないことから地震調査研究推進本部は繰り返し発生する地震として扱っていない。

1987年

1987年2月6日21時23分にMw6.1、同日22時16分にM6.7 (Mw6.5)、4月7日9時40分にM6.6 (Mw6.6)、4月23日5時13分にM6.5 (Mw6.6)の地震がそれぞれ発生している。

これらの内、2月6日22時16分の地震では小津波、4月7日の地震では負傷者1名を出している。

2月6日の22時16分に発生したM6.7の地震における、各地の震度は次の通り。

4月7日に発生したM6.6の地震における、各地の震度は次の通り。

4月23日に発生したM6.5の地震における、各地の震度は次の通り。

1996年

1996年2月17日0時22分に発生した地震 (Mj 6.8, Mw 6.7 - 7.0) は深さ約55 kmの太平洋プレート内で発生したものと推定されている。有感範囲は北海道から近畿地方まで、および岩手県から茨城県の広い範囲で震度4を観測した。

同じ太平洋プレート内地震である1993年釧路沖地震や1994年北海道東方沖地震とメカニズム解が類似しており、本地震がプレート内地震であることを支持している。

震度4以上を観測した地点は次の通り。

2008年

2008年7月19日に発生した地震 (Mj 6.9, Mw 7.0) は1996年のものとは異なり、CMT解によればプレート境界で発生した西北西-東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型であった。

東北地方太平洋側各地で津波が観測され、最大の高さは宮城県石巻市鮎川で23 cmであった。2日後の7月21日20時30分には本震の南南東側でM 6.1 (Mw 6.0) の余震が発生し、宮城県の涌谷町と福島県葛尾村・会津若松市で震度4を観測した。

震度4以上を観測した地点は次の通り。

気象庁はこの地震で、地震発生直後の11時41分に宮城県と福島県の太平洋沿岸に津波注意報を発表したが、13時20分に全て解除した。

各地で観測された津波の高さは次の通り。

2010年

3月

  • 発生時刻:2010年3月14日午後5時8分
  • 震源:福島県沖
  • 規模:M6.7
  • 震源の深さ : 40 km
  • 最大震度:福島県楢葉町の震度5弱
  • 被害:負傷者1人・住宅一部破損2件

岩手・宮城・福島の広い範囲で震度4、東日本の広域で震度3を観測したほか、北海道から滋賀県までの広い範囲で震度1以上を観測した。

前日の13日には前震とみられるM5.5の地震が発生し、やはり東北の広い範囲で震度3・4を観測している。またこの付近では1942年2月21日にM6.5、1963年8月15日にM6.6、1985年8月12日にM6.4の地震と、ほぼ定間隔で発生していた。

この地震も2008年のものと同様に、プレート境界付近で発生した西北西 - 東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型であった。

各地の震度(震度4以上)は次の通り。

6月

3月14日の地震とは異なる場所で発生した。規模はM6.2、震源の深さは40 kmである。福島県相馬市・浪江町で震度5弱を観測したほか、東日本の広域と能登半島・静岡県にかけて有感となった。震度4以上を観測した地点は次の通り。

2022年

脚注

注釈

出典

関連項目

  • 三陸沖地震
  • 宮城県沖地震
  • 福島県東方沖地震
  • 茨城県沖地震
  • 東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)
    • 東北地方太平洋沖地震の前震・本震・余震の記録

2013年 福島県沖で地震 津波観測|災害|NHKアーカイブス

福島 地震 余震

1978年 宮城県沖地震の記録 YouTube

福島県沖の大地震まとめ。(近年) YouTube

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